インタビューリレー
東京マラソンを通じて生まれたつながりのストーリー
ステージからストリートへ。~MOS、東京マラソンに挑戦!~

―世界で戦うMOSと、世界のランナーを迎える東京マラソン。異なるフィールドが共鳴し生まれた“つながりの物語” ―
ブラス&ダンスを融合させた“ブラダン”というパフォーマンスで世界を魅了する4人組管楽器ガールズグループ「MOS」。トランペット担当のMiyuさん、テナーサックス担当のLottaさんが東京マラソン2026でフルマラソンに初挑戦します。
“走る”という新たな挑戦へと足を踏み出したとき、彼女たちは何を感じ、どんな未来の景色を思い描くのでしょうか。
「東京マラソンを通じて生まれた“人と人のつながり”のストーリー」をテーマにお届けするインタビューリレー 2nd Runでは、東京マラソンを統括する大嶋康弘レースディレクターと、MOSのMiyuさんとLottaさんが音楽とスポーツが交差することで生まれる新たな価値、そして二人がこの挑戦を通して見たい景色を語り合います。
――「MOS」=「Music」「Omotenashi」「Sisters」- 活動コンセプトは音楽を通したおもてなし

――「MOS」はどのようなグループなのでしょうか。活動のコンセプト、グループ名の由来などについて教えてください。
Lotta 私たち「MOS」は4人組の管楽器ガールズグループです。隣のMiyu(ミユ)ちゃんがトランペット、私がテナーサックス、トロンボーンのErna(アーナ)ちゃん、アルトサックスのAMI(アミ)ちゃんという編成で活動しています。ブラスとダンスを掛け合わせた“ブラダン”をコンセプトにスタートしました。ここまで明確にジャンルとして掲げたグループは、これまであまりなかったんじゃないかなと思います。聴いても楽しい、見ても楽しい。そんなステージを目指しています。
Miyu 「ブラダン」という言葉は、私たちから生まれたと思っています。
大嶋RD 皆さんはまさにパイオニアですね。ライブ映像を拝見しましたが、「すごいな!」と鳥肌が立ちました。
Lotta ありがとうございます。最近はさらに音楽性を深めていこうと、ロックの要素を取り入れた“ブラスロック”もテーマに掲げ、日本全国、そして世界各地で活動しています。演奏しているのは、すべて自分たちのオリジナル楽曲です。
Miyu 「MOS」というグループ名は、Mが「Music(ミュージック)」、Oが「Ommotenashi(おもてなし)」、Sが「Sisters(シスターズ)」の略です。結成したのが、ちょうど東京2020オリンピック・パラリンピックの開催が決まった年で、音楽を通して皆さんをおもてなしできるグループになりたい、という思いを込めています。
大嶋RD MOSの皆さんとして、どのようなものを「おもてなし」と捉えているのでしょうか。
Lotta シンプルですが、「音を届ける」ことですね。本当に“届ける”ってどういうことなんだろう、といつも考えています。
Miyu 海外の方にも見ていただきたいですし、「おもてなし」は日本の心だと思っています。その気持ちを大切にしてライブをしています。
活動の根っこは「挑戦」、やってみないと見えない景色を知りたい

――今回、東京マラソンに挑戦する理由について教えてください。
Miyu 吹奏楽とランニングって、実は呼吸や心肺機能の面で通じる部分があって、私自身も部活のときによく走っていました。とはいえフルマラソンは未知。でも、日本で世界7大マラソンの一つが開催されていることに誇らしさもあって、新しい挑戦をしてみたいと思いました。
Lotta MOSは、ブラダンやブラスロックなど、常に新しい挑戦を続けてきたグループです。この「挑戦」が活動の根っこにあります。マラソンの挑戦も同じで、やってみないと見えない景色や感情を知りたい、そんな想いもあり走ることを決めました。
大嶋RD フルマラソンに挑戦するにあたって、不安はありますか?
Lotta 不安はありますが、少しずつ距離を伸ばせてきて、挑戦が現実に近づいている感覚もあります。
そして今日、どうしてもお伝えしたいことがあるんです。長い距離を走っていてふと、「あ、これってワンマンライブのペース運びにめっちゃ似てるな」と感じた瞬間があって。
Miyu 分かる!
Lotta 管楽器の演奏って呼吸をかなり使うんです。ワンマンライブだと1時間半くらい、息を止め続けて、一瞬吸って、また止め続けて、しゃべって、歌って、踊って……と。その感覚がマラソンに近い気がしていて、これを管楽器奏者の方たちにも共有したいんですよ。ただ、20kmも走っている管楽器奏者はなかなかいないから共感してもらえる人がいるかな(笑)。
Miyu でも本当に、ランニングを始めてからライブでも以前より疲れにくくなったと感じています。同じ時間をランニングで走り切れるなら、ライブも走り切れるという感覚がすごく分かってきました。
――東京マラソンというイベントに対して、どのようなイメージを持っていますか?
Miyu 東京の街中を思いっきり走ることができる大会というイメージです。コースは観光名所も多いから楽しみですし、沿道の応援も想像しながら、もう今からイメトレだけはたくさんできています(笑)。
大嶋RD 東京マラソンは東京都庁前からスタートし、東京駅前・行幸通りがフィニッシュです。おっしゃる通り、その間に観光名所や旧跡などをたくさん回れる、すごく良いコースです。その東京の街を自分の足で走ることで、普段とは違う景色が見えてくると思いますよ。
音楽ライブもマラソンも本質は同じ「一緒にひとつになろう!」

――「東京がひとつになる日。」というコンセプトについて、MiyuさんとLottaさんにはどのような体験をしてもらいたいですか?
大嶋RD ランナーだけの大会ではなくて、沿道で応援してくださる方、その地域にお住まいの方、ボランティアの方、運営スタッフも含めて、全員で作り上げるのが東京マラソンです。そして、世界中から集まってくるランナー含めて全員がまさにひとつになる瞬間を「東京がひとつになる日。」と表現しています。きっとお二人も周りの皆さんの応援、サポートを受けながら「苦しいけど頑張ろう」「走って良かった」と感じる1秒、皆さんと同じ思いになり、つながりを感じられる瞬間が何度もあると思うんです。それが私の思う「東京がひとつになる日。」。もしかしたら、MOSのライブでオーディエンスとひとつになるような感覚と近しいものを感じていただけるのではないかなと思っています。
Lotta 今のお話を聞くと、ライブの話かなって思うくらい、共通する部分が多いですね。自分としては、よりピュアな心で、音楽も含めて何事にもウソをつかないように、曇らないようにあり続ける努力をしています。そういう日々の積み重ねの先にステージがあって、周りの人もついてきてくれると信じています。だから、マラソンの沿道で応援してくださる人の声が響くのも、心からの声援だと感じることができるからだと思いますし、走る努力をできるのは「挑戦したい」という心からの想いがあるから。だから、ライブとマラソン、その本質は同じなのではないかなと感じています。
Miyu 私たちのライブは、「音楽を聴いてもらう」というよりも、「一緒にひとつになろう!」という思いでやっています。だから、本番に向けてはスタッフさんともひとつになろうとしていますし、ライブはやっぱり、お客さんがいて、私たちの音楽があって、そこでひとつになるものだと思っています。ライブ中に「こういう動きをやろうよ!」と私たちが呼びかけると、お客さんが応えてくれたり、逆にお客さんの方から「これをやろう!」と言ってくれることもあります。そうした一体感やつながりを感じる瞬間が、どのライブにもいくつもあって、「今、最高だな」と思える瞬間はきっとマラソンでも同じなのかなと想像しています。私は大会当日にその一体感を感じることができる瞬間をすごく楽しみにしていますし、「楽しい」という気持ちがみんなの幸せにつながる大会になることを願っています。
大嶋RD 2025大会では、1万8000人弱の海外ランナーが参加しました。日本語の声援は、言葉としては通じないかもしれませんが、動作や声のトーン、拍手、笑顔を見ていると、言葉を超えて思いが伝わっていると感じるんですよね。音楽もきっと同じで、だからこそ、あれだけの一体感が生まれるのだと思います。音の表現や、やさしさ、強さ――そういったものを、自然と感じ取っているんじゃないかなと、私も東京マラソンの中にある一体感をMOSの皆さんのライブの中に生まれていることを想像しています。
Miyu 音楽とスポーツの共通点として、「言語はいらない」ということは、私自身もすごく感じていたので、同じ気持ちですね。
同じ空気を共有できる瞬間があれば、人はもっと分かり合える

――スポーツと音楽の融合、またそれを通じた人と人とのつながりが、社会にもたらすものについて、どのように考えていますか?
大嶋RD 少し大げさに聞こえるかもしれませんが、「ひとつになる」という思いに共感できる世界になれば、争いはなくなるのではないかと思っています。もちろん、マラソンがすべてではありません。ただ、同じ空気を共有できる瞬間があれば、人と人はもっと分かり合える。東京マラソンは時間や人数の制限はありますが、誰でも参加できる大会です。大会を開催することで、ひとつになるだけでなく、平和につながると信じて、これからも続けていきたいですね。
Lotta ジャンル同士が広がり合うきっかけにもなりますよね。例えば、普段はMOSの音楽を聴いたことがなかったランナーの方に届くかもしれないし、逆に管楽器奏者が「あれ、走るのもいけるじゃん」と思うかもしれない。そうしたことが、いろいろな場所で起きたらいいですよね。
Miyu 最近は海外に行かせていただく機会も増えていて、音楽を通じた人と人とのつながりや、別のジャンル、別の世界とのつながりを感じる場面が多くなりました。モータースポーツやパラリンピックなど、MOSとしてもスポーツとの融合は結構多いです。
Lotta 特に海外のモータースポーツのイベントは、フェスのような雰囲気があります。スポーツと同時に音楽フェスが行われているような、本当にお祭りみたいな空気です。
大嶋RD 東京マラソンでも、応援を兼ねて沿道で音楽を演奏している方がいらっしゃいますし、スタートではマーティ・フリードマンさんがギターを演奏してくださっています。まだフェスというほどではありませんが、スポーツと音楽は、大会を通じてもやはり親和性が高いと感じますね。
Lotta もし、東京マラソンで音楽フェスなど開催することがあれば私たちも呼んでください!つぎの2027年は20回大会ですから(笑)
大嶋RD それでは、ちょっと企画してみましょうか!
Lotta 管楽器の音は、始まりの音としても、未来に向かう音としても、マラソンにすごく合っていると思っています。2026年の19回大会はしっかり走りますので、20回大会は音楽フェスの方で、ぜひよろしくお願いします!
――「MOSは『挑戦』が活動の根っこにある」というLottaさんの言葉が印象的でした。マラソンという新たな挑戦は、どのような意味を持ちそうですか?
Lotta MOSの視点で見ると、また新しいジャンルと結びつく瞬間だなと思っています。今回は走らない2人も、興味津々なんですよ(笑)。実際に走りたいかどうかは分かりませんが、挑戦することや、東京マラソンの歴史についても、関心を持っている様子は感じます。
Miyu 表現の方法は違いますが、マラソンは本当に音楽と変わらないなと思いました。音楽は音で表現しますが、マラソンは走る姿そのものが、人の心を動かすものだと思います。見てくださった方に「自分も頑張ってみよう」と思ってもらえるように、今回は音ではなく、「走る姿」で表現できたらいいなと思っています。
大嶋RD 東京マラソンでは、3万9000人のランナーが、それぞれの挑戦や目標を胸に走っています。そのための最大限のステージを作るのが、私たちの役目です。私は、ランナー一人ひとりをフィニッシュでお迎えすることをポリシーにしているのですが、涙を流して喜ぶ方もいれば、雄叫びをあげる方もいる。そうした表情を見るたびに、この仕事をしていて良かったと、涙が出るほど感じます。皆さんが主役となる舞台を、安全に、事故なく運営し、その素晴らしい瞬間を一緒に味わいたい。そのための挑戦を、東京マラソンも続けていきたいと考えています。
誰かの未来につながる力、新しい輪を広げたい

――これまでのお話を通して、東京マラソン当日の景色が、より鮮明にイメージできてきたのではないでしょうか。今、どのような姿やフィニッシュ後の景色を想像していますか?
Miyu 42.195kmを走り切ることは、まだ未知すぎて想像できない部分も多いですが、だからこそ、その未知を味わいに行きたいという気持ちが、より強くなりました。「東京がひとつになる日。」の一人として、みんなで楽しく大会を終えたいですし、「管楽器吹きでも、目標を持って頑張れば達成できる」という姿を発信できる立場になれたらと思っています。誰かの明日や、未来の頑張る力につながるような姿を見せることができたら嬉しいです。また、一緒に走る皆さんやボランティアさんとの交流や、新しい輪の広がりも楽しみにしています。
Lotta 自分がイメージしていたことをあらためて確認できた気がします。積み重ねられてきた東京マラソンの19年目の歴史に挑戦できることに、感謝の気持ちがより強くなりました。あとはもう、やってみるしかない。やると決めた以上、やりますし、やれると思っています。その先で感じたことを、MOSの活動や、自分の人生に生かしていくのが楽しみです。
大嶋RD そうですね、マラソンは走った後もとても大切です。当日はMOSの他のメンバーや、ご家族、ご友人も応援に来てくれると思います。たとえ完走できなかったとしても、「本当によく頑張った」と思ってもらえるはずです。42.195kmは簡単ではありませんが、挑戦すること自体が素晴らしい。その挑戦で得たものを、これからの音楽活動や人生に生かしていただけたら、大会としてこれ以上に嬉しいことはありません。
――最後に、初めてマラソンに挑戦する人、また新しいことに挑戦しようとしている同世代の方へ、メッセージをお願いします。
Lotta 偉そうなことは言えませんが、「一緒に頑張ろうね!」とお伝えしたいです。
Miyu ライブでも、バテてしまって音が出なくなる瞬間がありますが、その時にお客さんの笑顔や声に助けられて、また頑張れます。その感覚はきっとマラソンでも同じだと思うので、皆さんからパワーをもらいながら、「一緒に頑張りましょう!」という気持ちです。
大嶋RD 今回初めて挑戦するランナーの皆さんにも、「気持ちは同じ」「全力でサポートしています」「応援しています」という思いが伝わる大会にしたいと思っています。当日は怪我なく、無事に、東京マラソンを楽しんでください。
MOS プロフィール
管楽器演奏とダンスを融合させた唯一無二の「ブラダン」(ブラス+ダンス)パフォーマンスで注目を集める、管楽器4人組ガールズグループMOS。 テナーサックス、アルトサックス、トロンボーン、トランペットという稀有な管楽器編成を武器に、昨夏からはパンク、メロコア、スカナンバーで ロックシーンに旋風を巻き起こし中。
東京マラソン2026でトランペットを担当するMiyu(ミユ)さんとテナーサックスを担当するLotta(ロッタ)さんが初のフルマラソンに挑戦。トロンボーンを担当するErna(アーナ)さん、アルトサックスを担当するAMI(アミ)さんがボランティア活動に参加します。
大嶋RDプロフィール
1969年生まれ。千葉県出身。2003年4月、株式会社ニシ·スポーツ 海外事業部 担当部長。05年7月、日本陸上競技連盟 事業部 部長。15年4月、公益財団法人日本オリンピック委員会 マーケティング委員会委員(~2021)。21年4月、日本大学 スポーツ科学部 競技スポーツ学科 教授。23年9月、一般財団法人東京マラソン財団 アシスタントレースディレクターに就任。