インタビューリレー

東京マラソンを通じて生まれたつながりのストーリー

「走ることで、つながる。」〜東京マラソンから始まった、コーチとランナーの信頼関係〜

「走ることで、つながる。」〜東京マラソンから始まった、コーチとランナーの信頼関係〜

「東京マラソンを通じて生まれた“人と人のつながり”のストーリー」をテーマにお届けするインタビューリレー 2nd RUN。今回は東京マラソン財団公式クラブ「ONE TOKYO」主催のランニングクリニック「ONE TOKYOスクール」でコーチを務める三田翔平さん、3期続けて「ONE TOKYOスクール」に参加している三枝稔明さんに、ランナーとコーチの絆、時間を重ねて積み上げてきた継続の力、東京マラソンを通じて広がるコミュニティの魅力などについてお話を伺いました。

最初はダイエット目的で始めたランニング

――ランニング歴も含めた自己紹介からお願いします。

三枝 三枝稔明と申します。ランナー歴はもう10年以上になりますね。ランニングを始めたきっかけはダイエットが目的です。それから徐々に走っているうちに「大会にも出てみたいなぁ」と思い始め、それならやっぱりアボット・ワールドマラソンメジャーズ(AbbottWMM)の東京マラソンと思って目標にするようになりました。念願叶って、初のフルマラソンで東京マラソンを走り、4時間半ぐらいで完走することができました。当時はフィニッシュが東京ビッグサイトで、最後の橋がきつかったですねぇ。苦しい思い出がよみがえってきます(苦笑)。

三田 三田翔平です。ランナー歴は中学生から始めて、大学時代には箱根駅伝にも出場することができました。その後、実業団のトヨタ紡織を経て指導者となり、指導歴は今年で15年目になります。東京マラソンは前職時代に一度走ったことがあるのですが、25kmぐらいで肉離れを起こしてしまい、結局3時間40〜50分くらいかかってしまったんですよね。だから、東京マラソンというと肉離れのイメージが……

三枝 お互いに良い思い出がないじゃない(笑)。

三田 でも、沿道の応援が箱根駅伝のようにすごかったのはよく覚えています。どの地点でも応援の声があるので、常にモチベーションを高く保てるからこそ頑張りすぎちゃったのかなと。東京マラソンの応援のチカラは別格ですね。

三枝 そうですね。そこは他の大会とは全然違うと思います。皆さんがワーッ!と応援してくださいますからね。応援の声が途切れるポイントはほぼないのではないかと思います。

半年で25回の練習会、東京マラソンの出走権もついてくる

――「ONE TOKYOスクール」はどのような経緯で作られたのでしょうか?

三田 「ONE TOKYOスクール」には2024年の第1期から携わらせていただいています。「走りたい」と思っている人が多いなと感じていたことと、大人のランナーにしっかりとした走り方そのものをもっと広めて、怪我がないように走ってほしいという思いがありました。それにプラスして、半年間かけてしっかり体を作っていく重要性を皆さんに知っていただきたいという思いで立ち上げから携わらせていただいています。走り方一つを取っても、皆さんが知らないことが多いなと指導の中で感じていたので、一人でも多くのランナーに届けたい。そして、届けた後に一緒に東京マラソンを走りたいという思いがありますね。

――東京マラソン大会当日は、「ONE TOKYOスクール」の会員さんはコーチと一緒に42.195kmを走るわけですね。

三田 はい。現在はメインコーチとサポートコーチの2名体制でクラスを受け持っていまして、大会当日はメインコーチが設定タイムをもとに前を引っ張って、サポートコーチが会員さんの後ろにつくというサンドイッチ方式で走るような形になっています。チームの一体感も生まれます。

三枝 これが本当にありがたいんですよ。ドリンクから何から持ってきてくれますし、後ろからタオルで仰いでくれますからね(笑)。「ONE TOKYOスクール」は今回が第3期目になるのですが、私は第1期から参加しています。

――三枝さんはどのようなきっかけで「ONE TOKYOスクール」に参加するようになったのでしょうか?

三枝 やっぱり東京マラソンの出走権が特典でついてくるのが大きいですよね。それに、ランニングの勉強をさせてもらえる機会なんてめったにないですから、面白そうだなと思って参加してみました。

三田 半年かけて25回の練習会がありますが、まずは走る前の“土台作り”に重点を置いています。マラソンって、走ったら速くなるというイメージが強いと思うのですが、僕のクラスでは走る前にまず体を支える筋力、体の使い方を鍛えるトレーニングを徹底的にやっていますね。

――お二人の初対面時の印象、エピソードなどはありますか?

三田 僕はめちゃくちゃ覚えていますよ。三枝さんは最初、緊張されていたのか、あまりしゃべらなかったですよね。

三枝 そりゃそうですよ、最初からべらべら話す方が変ですよ(笑)。

三田 ただ、かなりきつめの練習でも絶対に諦めない人でしたね。顔がくしゃくしゃになりながらも最後までやり切っていたので、すごく努力家なのだなぁと思いました。

三枝 いいこと言いますねぇ。三田コーチの素晴らしい指導のもと、今こうして走れています(笑)。でも、冗談じゃなくて、三田コーチのレッスンはきついけど楽しい。ただ「これをやれ!」と言うのではなく、一緒にきつい練習をやってくれるから自分も頑張ろうと思うし、信頼感があります。

残り600mでまさかの棄権……その悔しさを乗り越えて

――「ONE TOKYOスクール」に継続して参加する中で、自分自身にどんな成長や変化を感じましたか?

三枝 やっぱり走るための筋力がだいぶついてきたと自分では思うのですが、「まだまだ、まだまだ」と三田コーチが言うんです。私は3年続けて参加しているのに100のうちの2でしたっけ?

三田 あ、でも最近はそうでもないですよ。35ぐらいにはなっていると思います。参加者の皆さんには僕のレッスンの代名詞となっている四足歩行の練習を最初にやってもらうのですが、三枝さんは5m、10mでヒィヒィ言っていたんです。

三枝 そう、最初は全然できなかった。

三田 でも今は2倍くらいできるようになりましたし、新しいトレーニングを習得するスピードも上がっています。体を支えるフィジカルがこの2年で強化されたと思います。

――お互いに「この瞬間、やっていて良かった」と思える印象的な場面があれば教えてください。

三田 やっぱり、昨年の第2期目じゃないですかね。三枝さんが一昨年の「ONE TOKYOスクール」第1期目に参加していただいた時、サブ4はほぼクリアできるという感じで大会に臨んだんです。でも、フィニッシュまで残り600mくらいで脱水症状になってしまいました。

三枝 担架で運ばれて完走できなかったんですよね。

三田 3時間55、56分くらいのペースで推移していたので、これはもう絶対に行けると思っていたのですが、実は残り5kmくらいから少し異変が……

三枝 そう、ちょっとおかしくなってフラフラになっていたんです。

三田 当日はカンカン照りの暑い日でもあったので、水分をかなりこまめに取ってもらってはいたのですが、もっとガンガン水分補給してもらうとか、僕たちのサポートもそれ以上にできれば良かったなという悔いもありました。もちろん、残り600mで棄権させてしまったという後悔もあります。

三枝 そうなの?

三田 もちろんですよ(笑)。翌年の第2期目の時はとにかく脱水症状にならないようにと気を付けて、積極的に自ら水分を取ってもらったり、前日のカーボローディングなどにも取り組んでいただきました。タイムも4時間を余裕で切れたので、この時は本当に良かったなと思いました。まあ、フィニッシュしてから脱水になりましたが……

三枝 そうそう(苦笑)。フィニッシュしてから倒れてしまったので、2026大会の目標は「脱水しない」こと。今度はみんなと完走した喜びを分かち合って、打ち上げの飲み会までちゃんと参加することが目標です(笑)。

東京マラソンと「ONE TOKYOスクール」が生み出す“つながり”の力

――三田コーチが思う「ONE TOKYOスクール」の魅力、価値はどのようなところにありますか?

三田 やっぱり、知らないことを知っていただけることが非常に大きいと思います。僕たち指導者もいろいろなことをランナーの皆さんにお伝えしたいのですが、1日ではなかなか教えきれません。でも、今週はこれ、来週はこれと、テーマを順序立てて指導することができれば、怪我のリスクもかなり抑えられるのかなと思っています。それに加えて、大会当日までサポートをさせていただけることがかなり大きいかなと思っています。また、ツールとしてLINEなどを活用して会員の皆さんと常日頃から連絡を取り合っているので、そうしたランナーとコーチの密なつながりもコミュニティとしての魅力だと思いますね。

三枝 なんでもサポートしてくれるから、これは本当にありがたいです。マラソンって、やっぱり一人で練習しようと思っても、なかなかできませんからね。いつでもサポートしてくれるコーチが身近にいることは心強いです。「ONE TOKYOスクール」に通うようになって、私自身のランニングライフも変わっていきました。大会直前の食事のアドバイスなど親身になって考えてくれる。自分にとっては本当にありがたい存在です。

――東京マラソンをこれから目指すランナーにとって、なぜ「ONE TOKYOスクール」のような継続的なサポートが大事なんでしょうか?

三田 モチベーションが高いランナーは大丈夫だと思うのですが、やはりきっかけがないとなかなか練習に行けない人は多いと思います。でも、週に1回、みんなで集まって練習しようという日があれば「私も頑張ろう!」という気持ちになれると思うんです。これは集団の心理としてとても重要なことかなと思っています。

三枝 確かに“みんなでやる”というのは素晴らしいですよね。一人で今と同じ練習をやれと言われてもできないですよ。みんなで集まってやるから「自分も!」と気持ちが高まってくる。

三田 「ONE TOKYOスクール」では週に1回、集団じゃないとなかなかできないメニュー、今までやったことがないような目新しい練習をやってもらうなど区別化しています。ここでしか体験できない練習を用意できるという意味でも、継続して週に1回集まっていただく価値があるのではないかなと思っています。

――「ONE TOKYOスクール」を通じて得られた仲間、コミュニティの関係についてはどのように感じていますか?

三田 皆さん、すごく仲がいいですよね。

三枝 そう。確かにこのスクールはみんな仲良しです。東京マラソンが終わった後も「この大会に一緒に出ようよ!」と誘い合って様々な大会に出ています。先日は北海道の網走に行きました。いろいろな地方の大会に行って、一緒に走っていますね。“大人の修学旅行”とか言いながら、みんなでワイワイ走って、夜の飲み会付きで仲間たちと過ごす時間を楽しんでいます(笑)。それも「ONE TOKYOスクール」に毎年通い続けている理由にもなっていますね。

三田 皆さん、マラソンに対するモチベーションがかなり近いところにあるので、話も合うんだと思いますね。

三枝 それはありますね。同じサブ4を目指していますし、体力的なものもだいたい同じだからこそトレーニングの話なども共通点が多い。「ONE TOKYOスクール」でいろいろな人に出会ったことによってつながりがどんどん広がって、仲間も1期、2期、3期とどんどん増えているわけですから、本当に楽しいですよ。

三田 僕の目から見ても、皆さんのつながりは本当に強いなと感じていますよ。地方の大会に6、7人で一緒に参加して、帰ってきた後のお土産話を聞くことも楽しみの一つです。

これからも様々なランナーが集まるコミュニティに

――「ONE TOKYOスクール」は今年で第3期目となりましたが、来年以降の将来に向けた展望についてはどのように考えていますか?

三田 現在は各クラスで別の練習をやっていますが、クラスの垣根を超えて大きなコミュニティを作っても面白いのかなと思っています。もちろん、タイムトライアルなどでみんなが集まる機会は今もあるのですが、もっと交流が生まれるような機会を作って、つながっていくと、もっと面白い何かが生まれるかもしれないですよね。また、我々の役割としてはサブ3からサブ6までクラスが幅広いランナーのニーズに応えられるような「ONE TOKYOスクール」でありたいですね。マラソンに挑戦してみたい人たち、独学のトレーニングをやり続けてもなかなかタイムが速くならない、うまく走れないというランナーのきっかけにもなれればと思っています。

三枝 最初の第1期目に参加した時は私も不安はありました。当時、参加を迷っていた自分にはすぐに飛び込んだ方がいいよと言いたい。同じ志を持ったランナー仲間の輪が広がって、ランニングライフがより豊かになりました。マラソンに興味がある人なら全員「ONE TOKYOスクール」に来てみればいいのになと、常々思っています。ここには完走を目指すクラスもありますので、ランニングをしたことがない人などいろいろな人に挑戦してほしいですよね。出走権付きというのも魅力です!

三田 練習に困っている人、走り方そのものを知りたい人、どんなランナーでもウェルカムです。サブ5、サブ6のクラスは未経験者もかなり多いです。これまでランニングをしたことがない人でも全然大丈夫。そして、半年間の練習をしっかりと積んで、みんなと一緒に走りたいという思いで参加していただけると嬉しいです。

――それでは最後に、お互いのこれからに向けたメッセージをお願いします。

三田 本当に怪我なく、走りすぎずに、一番大事なところでパフォーマンスを出せるように全力でサポートしていきますので、何か少しでも困ったことがありましたらいつでも言ってください。

三枝 はい、これからもよろしくお願いします! 私は三田コーチのサブ4クラスにいますので、東京マラソン2026では4時間切り、そして「脱水しない」を目標に(笑)、頑張りたいと思います。

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