インタビューリレー

東京マラソンを通じて生まれたつながりのストーリー

「空と走路がつなぐ絆」― 東京マラソンと航空自衛隊連合准曹会の支援と想い ―

「空と走路がつなぐ絆」― 東京マラソンと航空自衛隊連合准曹会の支援と想い ―

左から:梅村さん、杉本さん、平川さん

「東京マラソンを通じて生まれた“人と人のつながり”のストーリー」をテーマにお届けするインタビューリレー 2nd Run。

コロナ禍により通常の大会開催が叶わなかった2020年、航空自衛隊連合准曹会の皆様によるボランティア協力が大会を支える大きな力となりました。それ以降、航空自衛隊と東京マラソンの間には「支える側」としての信頼と協力関係が育まれ、コロナ禍以前から実施いただいていた音楽隊での応援、2027大会ではブルーインパルスの展示飛行が決定するなど、そのつながりは大きな広がりを見せています。

今回は元航空自衛隊連合准曹会会長、音楽隊とブルーインパルスに関わる現役の航空自衛官2人に東京マラソンを通じて生まれた支援・応援のつながり、2027大会で展示飛行するブルーインパルスへの期待などについてお話を伺いました。

2020年の新型コロナ禍で約100名の航空自衛官が参加

――はじめに自己紹介をお願いします。

杉本 杉本孝哉と申します。私は3年前まで航空自衛官でした。現役時代は航空自衛隊の私的団体である「航空自衛隊連合准曹会」の会長を務めていました。「航空自衛隊連合准曹会」は、全国に所在する各基地で地域貢献のため、任務以外の活動として主にボランティア活動を行っている組織です。その活動のひとつとしてご縁もあって、東京マラソンのボランティアに参加することになりました。退官後もこのボランティア活動を続けています。そして連合准曹会でも毎年、関東周辺のさまざまな基地から有志を募り、200名程度が東京マラソンボランティアに継続して参加しており、非常に誇りに思っています。

梅村 梅村誠一と申します。航空幕僚監部広報室で音楽隊の担当をしております。これまで、対領空侵犯措置を行う兵器の管制業務官、総務、人事などを担当していきました。

平川 平川通と申します。現在は航空幕僚監部広報室でブルーインパルスを担当しています。これまで20年ほど戦闘機のパイロットを務め、その後2020年から23年までブルーインパルスのパイロットをしていました。

――東京マラソンと航空自衛隊との関わりについて教えてください。

杉本 2020年に東京マラソンのボランティアがあると聞き、団体でボランティアチームエントリーしました。しかし新型コロナの影響で一般の部が中止となり、ボランティアもいったんキャンセルとなりました。残念に思っていたところ、東京マラソン財団のボランティア事業部の方から「エリートランナー、車いすランナーの大会を成功させたいので力を貸してほしい」とお声がけをいただきました。当時の上司に相談した後、私たちで何ができるかを考え、感染対策を万全にして約100名で参加したことが、東京マラソンのボランティアに関わるきっかけとなりました。連合准曹会は、現在も継続して毎年エントリーしています。その活動は主にコース管理を担当しており、防衛省前や日本橋などで活動をしています。

梅村 東京マラソンでは防衛省正門前において、陸・海・空いずれかの音楽隊が演奏を行っています。この取り組みは、大会を支える立場として、音楽を通じてランナーや沿道の皆さまにエールを届けたいという思いから始まったものです。その中で航空自衛隊の音楽隊が担当となった際は、私たちが調整を行っています。

ランナーの背中を押す生演奏の「音楽の力」

――航空自衛隊がボランティアや音楽隊として東京マラソンを支える意義をどのように感じていますか?

杉本 これは現役時代から感じていたことですが、任務以外で地域社会に貢献できるものの一つがボランティアだと思います。スポーツ大会に限らず、地域のお祭りや清掃活動などもそうですし、特に過疎地域では人手が足りず学校行事の実施も難しい場合があります。そうした場所で活動することで、航空自衛隊の広報活動として地域にしっかりと根付かせたいという思いを込めて、さまざまなボランティア活動とその啓発活動に従事してきました。

梅村 東京マラソンのような大規模な大会ほど、多くの「支える人」がいて成り立っているものだと思います。ボランティアや音楽隊のように支える人、応援する人の存在も、大会の価値の一つではないでしょうか。2026大会で私自身ランナーとして走り、改めて実感しました。防衛省はちょうど5km地点にあり、走り始めて少し落ち着いた頃に音楽隊の応援があることで、もう一度奮い立つことができるんです。スタート後、最初の大きな応援だと思いますし、音楽隊の力の大きさを感じました。一度立ち止まって全身で応援を受けてから走り出したほど、強く印象に残っています。

――ほかのランナーから音楽隊に声をかけてもらう機会はありますか?

梅村 毎回反響をいただいています。その場で声をかけていただくこともありますし、多くのランナーの方が手を振ってくれます。大会後に感謝のメールやお電話をいただいたこともありました。

杉本 ランナーの応援だけでなく、「音楽隊の演奏を聴きに来ました」という観客もいらっしゃいます。音楽隊のファンの方も毎年お見えになりますね。ボランティア活動中に、実際にそうした声を伺いました。

梅村 声援や拍手も含めて“音”には力がありますが、その中でも自然と心に入ってくるのが音楽の力だと思います。イヤホンで音楽を聴きながら走るランナーの方もいるかと思いますが、その音楽とはまた違う、あれだけの音圧で背中を押してくれる生の演奏は、やはり音楽隊ならではです。その力の大きさを強く感じましたし、多くのランナーの方にも感じていただけているのではないかと思います。音楽を通じて航空自衛隊の存在を身近に感じていただけるとすれば、それもまた、この活動の大きな意義の一つだと感じています。

ランナーの立場から見た東京マラソンの魅力

――では、ランナーの立場から見た東京マラソンについても教えてください。平川さんと梅村さんは2026大会にランナーとして参加されたとのことですが、実際に走ってみて、どのようなことを感じましたか?

平川 マラソン自体は何度か経験がありますが、これまでとは応援してくださる方、支えてくださる方の数がまったく違いました。どこを走っていても「頑張れ」という声が途切れず、多くの人に支えられていることで、こんなにも楽に走れるのかと感じました。途中で足が痛くなり休みたいと思う場面もありましたが、それ以上に声援の力が強く、頑張ろうという気持ちになれました。音楽隊の応援もとても良かったです。こういった形で音楽隊の演奏を聞くのはまた、いつもと違って新鮮でした。

梅村 私はこれまであまりマラソン大会に出たことがなく、これほど大きな大会はほぼ初めてでした。東京という大都市で、ひとつのイベントにこれだけ多くの人が同じ方向を向いていることに驚きました。沿道の応援も途切れず、コース上には常に観光名所があり、ずっと応援されている感覚がありました。これまで私たちは応援する側・支える側でしたが、支えられる人はこんなに嬉しい思いをするんだと身をもって知りましたので、今度また逆の立場になった時はこれまで以上に支えていこうと改めて認識する大会になりましたね。

――走っている最中に何か印象的な出来事はありましたか?

平川 40km地点だったと思うのですが、真っ赤なドレスを着て「私、還暦です」というたすきをかけて走っている女性ランナーがいたんです。しかも足元を見たらサンダルで。その女性に普通に抜かれてしまって、完全に負けた気分でした(笑)。

梅村 私たちも最初は頭にブルーインパルスのかぶり物をして走っていましたよね。でも思っていた以上に暑くて5km地点の防衛省前で脱いで航空自衛官のボランティアに預けさせていただきました(笑)。


杉本 いいチームプレーでした(笑)。

東京マラソンのボランティア活動は人材育成でもある

――先ほど、新型コロナがきっかけでボランティア活動に参加するようになったというお話がありましたが、当時はどのような思いで参加されたのでしょうか。

杉本 上司のアドバイスを受けた後、任務ではないのですが、ボランティアといえども、これは災害派遣と同じかなというイメージを持って、連合准曹会のメンバーに問いかけました。有志という形での参加であり、コロナ禍でもありましたので、ご家族・部隊長・同僚の承諾、許可を得たうえで参加することを条件に参加者を募りました。そうしたところ、賛同の声を多くもらい、参加者もたくさん集まりました。これは今でも誇りに思っています。ボランティアは、皆が同じ方向を向いて、気持ちを一つにして取り組むものだと思っています。そうして活動を終えた後の達成感ややりがいは本当に大きいと思いますし、活動後に「やって良かった」という声をたくさんもらえたのも、とても嬉しかったですね。

――東京マラソン2020から継続して活動する中で、航空自衛隊と東京マラソンの関係性の変化はどのように感じていますか?

杉本 東京マラソンのボランティアに参加したいという声は、航空自衛隊の中でどんどん広がっています。各基地ごとに参加枠を設けているのですが、落選してしまう隊員もいるくらい競争率が上がっています。それだけ関心が高まっているということだと思います。その理由の一つとして、東京のど真ん中、例えば銀座や日本橋でボランティア活動をする機会はなかなかありませんし、多くの海外の方と触れ合う機会も貴重だという点があります。そうした経験に対する反響が非常に大きいんです。
また、航空自衛隊ではボランティアを通じて人材育成や後輩育成も行っています。階級に関係なくボランティア仲間として活動することで、先輩から後輩へ、その後輩からさらに次の世代へと経験がつながっていく。そうしたつながりが、東京マラソンのボランティアを通じて生まれていると感じています。

――東京マラソンを通じた地域とのつながりについてはいかがでしょうか?

梅村 音楽隊に関しては、「今年も演奏するんですか?」という声を地域の方からよくいただきます。また、音楽隊の演奏を目当てに防衛省まで足を運んでくださる方もいらっしゃいます。
こうした一つ一つの反応から、音楽隊の活動が航空自衛隊をより身近に感じていただくきっかけになっているのではないかと感じています。
その意味でも、東京マラソンを通じた社会との関わりは、今後も大切にしていきたいですね。

ブルーインパルスの飛行、みんなが同じ空を見上げる

――ブルーインパルスについて伺います。東京上空を飛んだ際の思いを教えてください。

平川 東京上空での飛行は、2020年の医療従事者への感謝飛行が初めてで、その後、東京2020オリンピック・パラリンピックのそれぞれの開会式の日に飛行しました。ブルーインパルスはGPSなどで方向や距離を把握しながら飛びますが、最終的には目で目標物を確認して飛行します。東京ドームや東京スカイツリーのような目標は分かりやすいのですが、感謝飛行の際は病院の上空を通る飛行経路で、ビル群の中にある病院を目視で特定するのは非常に難しかったです。そのためGPSを頼りに飛行しましたが、着陸後も本当にその病院の上を飛べていたのか確信が持てませんでした。夕方のニュースを見て、きちんと飛べていたことが分かった時は、本当に良かったと安心しました。
一方で、私たちの飛行によって人が集まり「三密」になってしまうリスクもあり、本当に飛んでいいのかという葛藤もありました。それでも、こういう時期だからこそ、同じ空を見上げてほしいという思いがありました。

杉本 医療従事者への感謝飛行の当日、墨田区の病院で働いている親戚から、「みんなが涙を流して感動していた」「航空自衛隊は本当にすごいね」という話を聞いたことがとても印象に残っています。また東京2020大会では無観客での開催となる中で、多くの自衛官がさまざまな支援に携わりました。そこでは、私も国旗掲揚と自転車のロードレース競技に関わる隊員のサポートをしました。その時もブルーインパルスの効果を強く感じました。航空自衛官だけでなく、陸上自衛隊や海上自衛隊の隊員にも、自衛官としての誇りと大きな力を与えていたと思います。
梅村 当時、私は国分寺で自衛官の採用業務に携わっていたのですが、気持ちが少し前向きになったという声をいただいたことを覚えています。コロナ禍で沈んだ雰囲気の中でブルーインパルスが、みんなが忘れていた“色”を思い出させてくれて、「同じ空を見上げて、周りの人と自然に会話が生まれていた」という声を伺えたことは、とても印象に残っています。

東京マラソン2027は世界が「ひとつになる」大会に

――それでは未来への展望についてお伺いします。航空自衛隊と東京マラソンは2027大会、さらにその先に向けて、今後どのような関係でいてほしいと思っていますか?

杉本 航空自衛隊だけでなく、陸上自衛隊や海上自衛隊にもボランティアに参加したい隊員は多くいますので、できれば3つの自衛隊で参加してもらいたいですね。私自身も死ぬまで続けていきたいですし(笑)、後輩にも「一緒にやろうよ」と声をかけていきたいですね。


梅村 今後も自衛隊として、さまざまな形で関わっていけるのではないかと思っています。個人的な話になりますが、完走後のあの高揚感や、すぐに次の大会にエントリーしたくなるようなテンションをまた味わいたいなと思います(笑)。自衛隊としても、東京マラソンを通じて都民・市民の皆さまにより親しみを持っていただけるような関わり方を、これからも続けていきたいですね。

――東京2027大会で展示飛行をするブルーインパルスへの期待を教えてください。

平川 東京マラソンを走るランナー、ボランティア、沿道に応援に来た方など大会に関わる全ての人たちに感動、勇気を届けるような展示飛行を実施してほしいと思っています。大会の運営に携わる皆さんはもしかしたら大会の準備に向けた業務をしている時間かもしれません。できればその手を止めて、ランナー、観客の皆さんと共に同じ空を見上げていただき、心をひとつにして大会をスタートさせていただけることを願っています。

――最後にメッセージをお願いします。

杉本 東京マラソン2026では参加ランナーが3万9000名に増え、ボランティアも1万名規模と非常に大きな大会になっています。そのつながりだけでもすごい規模だと思います。さらに2027大会ではブルーインパルスの展示飛行も予定されており、観客も含めて東京がどのような一体感になるのか、想像がつかないほどです。ただ、必ず大きな感動を届けられる大会になると思っていますので、ランナー、ボランティア、観客の皆さんを含めて、世界的にひとつになれるのではないかと感じています。私自身、今はワクワクと期待でいっぱいですし、この思いを次の世代にもつないでいきたいと思っています。

梅村 航空自衛隊として東京マラソンに関われることを本当に嬉しく思っていますし、国民の皆さまに親しみを持っていただける貴重な機会だと感じています。特に、音楽を通じて想いを届けることは、航空自衛隊の活動や人となりを、柔らかく、分かりやすく伝える手段だと感じています。
2027大会も、音楽の力を大切にしながら、支えることの意義や人と社会とのつながりを感じられる大会になっていけばいいですね。

平川 東京マラソンという世界的なイベントは、多くの人が支え合うことで成り立っているものだと思います。その中でブルーインパルスが展示飛行を行うことで、さらに一体感が生まれ、世界中がひとつになれるような大会になればいいなと思っています。

――ちなみに、東京マラソン2027ではどういう立場で、どの場所にいたいでしょうか?

杉本 私はやっぱりボランティアですね(笑)。

平川 またランナーとして応募するかもしれませんが、なかなか当選しないので、もし走れなかった場合はコース後半で応援したいです。一番つらいところで支えたいですね。

梅村 実際に走った経験を活かして防衛省前や一番つらかった35km付近の田町の折り返し地点で応援したいと思います。

航空自衛隊と東京マラソン財団は東京マラソン2026終了後の3月3日に東京マラソン2027大会におけるブルーインパルスの展示飛行実施について発表いたしました。
https://www.marathon.tokyo/news/detail/news_20260303145140.html

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