インタビューリレー
東京マラソンを通じて生まれたつながりのストーリー
小さな「力こぶポーズ」に込めた想い がんを乗り越えた父とのつながりのストーリー

「東京マラソンを通じて生まれた“人と人のつながり”のストーリー」をテーマにお届けするインタビューリレー 2nd Run。
今回は、がんを乗り越えた父から教えられた想いを「力こぶポーズ」で伝えるQuan Doさんの「父とのつながりのストーリー」を紹介します。
父が教えてくれた「本当の愛」
私の父は上咽頭がんを乗り越えたサバイバーで、私がランニングを始めるずっと前から、忍耐とは何か、そして本当の愛とは何かを教えてくれました。
がんとその治療を受ける前、父はたくましく、スポーツ選手のような体つきをしていました。私の幼い頃の一番はっきりとした思い出のひとつは、父が笑いながら腕を曲げて、力こぶが左右に動くのを私に見せてくれたことです。
治療後、父はずいぶん痩せてしまいました。その変化は今でも私の心に残っています。でもそれは悲しみではなく、父がどれほどのものを乗り越えてきたのかを思い出させてくれる大切な記憶です。
父ががんを克服した後、ランニングは私たちがつながり続けるための方法になりました。私はトレーニングやレースの話、小さな成功の積み重ねについて父と話します。そしてレース中にカメラを見つけると、私はあの頃の父がそうしてくれたように、そっと力こぶポーズをします。それは父への静かなオマージュであり、日常のふとした瞬間を切り取って、私たちのつながりを外の世界へつなぐものでもあります。
あなたの物語は「失ったもの」だけで紡がれるわけではない

ランニングを通じた父とのつながりは、私にとって「強さ」の定義そのものを変えました。
以前は、強さとは純粋に肉体的なものだと思っていました。でも今では、強さとは粘り強さであり、謙虚さであり、そして人生から「慎重に生きること」を求められても、ちゃんと向き合い続けることなのだと感じています。
父の歩んできた道は、私に「エゴのない規律」「現実から目を背けない感謝」、そして「見せびらかすのではなく、静かで揺るがない勇気」を教えてくれました。
カメラに向かって力こぶのポーズをするとき、それは「強く見せたい」ためではありません。私が父という存在と共に走っているということを思い出させてくれ、父が乗り越えてきたすべてを讃える生き方をしたい、という私自身への約束なのです。
私は、あの小さな“力こぶポーズ”と、そこに込めた想いを、何百万人もの人が「継続すること」「乗り越えること」の意味を共有する東京マラソンに持っていきたい。そして、あのポーズが象徴するものを、そっと伝えられたらと思っています。
私が伝えたいメッセージは「強さは形を変えても、ちゃんと“本物”であり続ける」。
愛やしなやかな強さは、むしろ大きく育てていくことができます。もし、病気を乗り越えた誰かを支えている立場なら、シンプルな形でいいから、寄り添い続けてほしい。散歩をする、声をかける、一緒に続けられる小さな習慣を持つ――それだけで十分です。
そして、もしあなた自身が回復の途中にいるのなら、あなたの物語は「失ったもの」だけで紡がれるわけではない、ということを忘れないでください。
あなたのストーリーは、あなたが築き続ける人生そのものなのです。